川岸さんのヴェネツィア紀行 (6)さようならベネツィア

 

第6回 『さようならベネツィア』                   ←第5回「ゴンドラで運河を行く」へ戻る

 

高橋:5月の「みんなの音楽入門2~こころおどる Viva! Vivaldi!~」コンサート終了後に、
   ヴィヴァルディの街ヴェネツィアを旅した川岸さん。
   それから半年、ぼちぼちと気長に連載してまいりました「川岸さんのベネツィア紀行」シリーズも、
   いよいよ最終回です。

   最終回の今回は、一緒にコンサートに出演した川岸さんのお仲間の「アンサンブル・フェニーチェ」の皆さんにも
   ご登場いただき、川岸さんのアルバムに残った、まだ紹介していないお写真の中から、
   それぞれ気になった写真について質問をしてもらうという趣向にいたしました。
   
<写真1、朝の運河>********

長谷川:街の中の運河ですね。

川岸:この写真は朝食前の散歩の際(6時40分頃)に橋の上から撮ったものです。
   小さな運河を挟み込むように立錐する建物や、穏やかな水面に浮かぶ活動前の船などありふれた景色でしょうが、
   何となく画になり思わずパチリの2枚です。
   ヴェネツィア市民にとっては日々の生活を支える生活道路であり、路地裏であるのでしょうね。 

長谷川:ゴンドラには乗られましたか?

川岸:はい、朝食の後、ゴンドラツアーに出かけました。
   30分ほどの船旅でした。道路や橋や建物の上から見る景色とは異なり、水面近くの目線から見上げる景色や
   人々の様子は、新鮮で臨場感のある体験でした。

高橋:ゴンドラに乗られた様子は、前回の「ベネツィア紀行第5回、ゴンドラで運河を行く」で詳しくご紹介して
   いただきましたので、そちらもご参照ください(→「ゴンドラで運河を行く」へ


<写真2、サンモイゼ教会>*******


高橋:こんなふうに町のあちこちに教会があるのですね。

川岸:朝食前の散策で、運河に掛かる小さなアーチ橋(ゴンドラが通行できるように天井がアーチ型の階段橋)を渡りながら、
   仕入商品と思われる荷物を満載した手押し車を器用に操りアーチ橋の階段を苦もなく渡る光景を眼にしました。

   さらに歩いていくと小振りながら素敵な教会に出会いました。
   ガイドブックもなく名前もわからないままカメラに収めそのままにしていましたが、帰国後写真の整理をしていたとき
   この寺院が「サン・モイゼ教会」と分かりました。
   「十戒」のモーゼに捧げられたヴェネツィアを代表するバロック教会であるとのことです。
   教会の正面には人物の胸像や立像、窓や柱の凝った装飾など美術品が満載といった感じです。

高橋:背後の塔は鐘楼でしょうか?
   
川岸:サンモイゼ教会の鐘楼です。
   全体が赤レンガ造りで尖塔を持った鐘楼は、教会の白亜と対照的で、絶妙なバランスを醸し出していますね。
   ヴェネツィアに限らずイタリアの街のそこかしこに寺院や宮殿や美術館など、古代・中世の文化遺産がさりげなくたたずむ様は、
   正に美術館や博物館の中にいるようです(ヴェネツィアは街全体が世界文化遺産に指定されています)     


<写真3、朝食>*******


高柳:私はこの写真が気になりました。美味しそうですね。
   ここはどこですか?。

川岸:ホテルのテラス、朝食のテーブルです。
   朝の散歩から帰った後の心待ちにしていた朝食です。
   食事内容はバイキング方式で、イタリア語無しで気軽に好きなものが食べられ満足しました。
   写真にも写っていますがフルーツやパンの種類が多く美味しくいただきました。
   ただ、自分の好みに偏り、ヴェネツィアならではの料理を選ばなかったと後悔もしました。

高橋:向こうは運河ですか?

川岸:窓の外は海(大運河)、しかも有名なサンタ・マリア・サルーテ教会が目の前にあり、最高のロケーションでの食事です。

 

<写真4、道端の水道とホテル裏庭の井戸>********
 

大西(大西先生はアンサンブル・フェニーチェと共演してくださることもあるピアニストの先生で、
   この時練習会場にいらっしゃったので飛び入りの質問です。)
  :面白いデザインの水道ですね。

川岸:ヴェネツィアの飲料水は、今ではイタリア本土から水道管で送られて来ますが、かつては雨水を溜めて使っていたそうです。
   その名残りが写真の物体、井戸です。
   ヴェネツィアは干潟に木の杭を打ち込みその上に街を作ったため、地中を掘って水を手に入れることができなかったので、
   広場や庭の下に雨水をためる貯水槽を作り、その上にこのような井戸口を置き、汲み上げていたそうです。
   かたちは千差万別、彫刻や紋章など凝ったデザインもあるとか、さすがヴェネツィア芸術の一端が観られますね。
   右の写真は宿泊したホテルの中庭にあったもので、シンプルな造りと鉄製の錆びた蓋が静かに佇んでいました。
   左の写真は道路の脇にあったもので、デザインの施された本体と甲冑のような蓋、蛇口があり水が出ています。
   飲めるのか確認しませんでしたが、手を洗ったり、犬や野鳥の水飲み場といった感じですね。
   日本の井戸と何となく似ており、古き良き趣を持った地味ではあるが存在感たっぷりの遺産だと思います。

高橋:元エンジニアの川岸さんの目が見逃さなかった、この町の大切な設備ですね。

大西:こんなのが私たちの町にもあったらいいなあと思います。

川岸:長岡に在るとしたら消雪パイプに応用あるいは関連付けできるかもしれませんね。

<写真5、ウインドーショッピング(仮面の数々)>********
    

長谷川:こんなにたくさん仮面を置いているお店ありましたか?。

川岸:散歩中の路地で2軒見つけました。小さなお店のショーウィンドウにぎっしりと仮面が飾られ、
   見ての通り賑やかで目立ちました。
   仮面の種類は人面や悪魔や太陽・月、さらにいろいろな動物など多種多様、見るだけでも楽しいものです。

長谷川:お土産にお求めになられましたか?

川岸:はい。息子に頼まれていたのでオーソドックスな人面を買いました。
   サン・マルコ広場内の洒落た店ですが言葉の心配もあり暫く外からのぞき見いていましたが、思い切って入り
   なんとか手ごろな品を買うことができほっとしました。

高橋:長谷川さんはヴェネツィアに行かれたことがあるんですよね。

長谷川:そうなんです、あ、これ、こういう感じのお店で買ってきたんですよ!
    (と、バックからオレンジ色の革製のお財布を取り出して見せてくださいました)。

高橋:うわぁー!イタリアらしい色合いですね。ショッピングも楽しそうですね。



<写真6、ヴェネツィアングラス>********

 

石川:私は、これに興味を引かれます。
   ヴェネツィアングラス、いいですよね。

川岸:ヴェネツィアで建築物・絵画・彫刻以外で有名なものは、ゴンドラ、カーニバルの仮面、そして
   ヴェネツィアン・グラスですね。
   ツアーでもグラス工房に案内されました。
   実際に職人さんが、解けたガラスを棒の先に付け回しながら、ハサミで器用に押したり曲げたり切ったりして、
   グラスを作り上げる過程を見させてもらいました。

高橋:繊細なものが綺麗ですが、お土産に買ったら持ち運びに気を使いそうですね。

川岸:洗練されたデザインや見事な装飾や巧みな色使いなど、買いたいと思いましたがお土産候補リストにはなく、
   見るだけの楽しみにとどめました。
   写真はホテルのロビーに置かれたガラスケースに飾ってあったヴェネツィアン・グラスです。
   家内が気に入って撮ったものです。



<写真7、どこだかわからない建物>******



高橋:最後に残ったこのお写真ですが、川岸さんもどこなのかわからないということでした。
   でも、何か惹かれるものがあって撮られたんでしょうね?

川岸:前述した「サン・モイゼ教会」と同様、街のあちこちに気になる美術作品が無造作に置かれており、
   その都度立ち止まり、「何だろう?」「誰が作ったのか?」「何のために?」となります。
   とりあえずカメラに収め、後で誰かに聞くか調べようとの思いで撮ったものです。
   帰国後少し調べてみましたがわかりません。でもいかにもイタリア風の円柱に囲まれた立像です。
   若き有名人でしょうか、台座にバルバロと刻まれていました。
   何か話しかけられているようでもあり、お気に入りの1枚です。

高橋:実は、これがどこの何なのかわからないというお話を前にお聞きしていたので、私も調べてみました。
   前回の「ゴンドラ」の回に引き続き、川岸さんのお話を手掛かりにgoogleマップで探してみたところ、
   今回は突き止めることに成功しました!
   ↓こちらで間違い無いでしょう!! 

  


高橋:調べたところによりますと 、この建物は「サンタマリア・デル・ジッリオ」という教会で、
  「バルバロ」というのはこの教会を作るのに貢献した有力貴族のお名前のようです。
  ファザードの彫像は一族の方達ということです。ちなみに写真の彫像の人物の名前は、カルロ・バルバロ(Carolus Barbaro)さん
  ということがわかりました。
  バルバロ家についてはこちら→wiki 
  これだけバルバロ一族の有力者のお名前が大量に載っているのですが、該当のカルロさんが何をしていた人なのかは、
  wikiにも書かれていなくて残念です。でも、この彫像の写真はちゃんと載っていますね。
  この教会のほど近くには、バルバロ宮(Palazzo Barbaro)と呼ばれている、バルバロ家所有だったという邸宅もあるようです。
  また、内陸側に渡った地域にも、ヴィラ・バルバロと呼ばれる、当時の有名建築家の手による大邸宅(夏の別荘)があり、
  バルバロ一族の繁栄の様子が伺えます。

  一枚の写真を調べていたら、教科書には載っていないヴェネツィアの歴史の一角がどんどん見えて来ました。
  それは、この写真を撮ってきてくださったからこそたどり着くことができたことで、
  川岸さんの好奇心のおかげです。
  
  さて、教会の話に戻ってみますと、
  教会の壁面の彫像が聖人ではなく町の有力者、というところが、いかにもヴェネツィアならではなのかなと思います。
  
  


<そして、さようならヴェネツィア>*********
  
  

川岸:感動と見足りなさを半々にしての別れです。
   サン・マルコ寺院の大鐘楼や・ドゥカーレ宮殿が大運河のかなたに遠のく様はシネマスクリーンを見ている感じです。
   この写真の中に、ヴィヴァルディのピエタ教会は写っていますか?

高橋:右端の建物のほんの数軒先のようです。
   写真には写っていませんが、川岸さんの視野には映っていたと思いますよ。
  
   川岸さん、たくさんのお土産話、ほんとうにありがとうございました。
   私たちも、とても楽しませていただきました。
  
川岸:初のヨーロッパ旅行でイタリア・ヴェネツィアを選んだことに大満足でした。
   異国の雰囲気、西洋美術、人、食、などなど貴重な体験で頭脳も身体も幾分若返った気がします。

   6回に亙るヴェネツィア紀行をご覧いただきありがとうございました。 
   グラッツィエ!  アリヴェデルチ!  
   
   


   ♪『川岸さんのヴェネツィア紀行』完 

  
   ←第5回へ




 

 


   


 





 


 
 










<???>

高橋:最後に残ったこのお写真ですが、川岸さんもどこなのかわからないということでした。
   何か惹かれるものがあって、撮られたんでしょうね?。

川岸:前述した「サン・モイゼ教会」と同様、街のあちこちに気になる美術作品が無造作に置かれており、その都度立ち止まり、
  「何だろう?」「誰が作ったのか?」「何のために?」となります。
   とりあえずカメラに収め、後で誰かに聞くか調べようとの思いで撮ったものです。
   帰国後少し調べてみましたがわかりません。でもいかにもイタリア風の円柱に囲まれた立像です。
   若き有名人でしょうか、台座にバルバロと刻まれていました。何か話しかけられているようでもあり、お気に入りの1枚です。

高橋:実は、この写真がわからないというお話をお聞きしていたので、私も調べてみまして、
   突き止めることに成功しました!
   ここですね。

  


5.ヴェネツィアとの別れ

川岸:感動と見足りなさを半々にしての別れです。サン・マルコ寺院の大鐘楼や・ドゥカーレ宮殿が大運河のかなたに遠のく様はシネマスクリーンを見ている感じです。
  
 初のヨーロッパ旅行でイタリア・ヴェネツィアを選んだことに大満足でした。異国の雰囲気、西洋美術、人、食、などなど貴重な体験で頭脳も身体も幾分若返った気がします。

6回に亙るヴェネツィア紀行をご覧いただきありがとうございました。 グラッツィエ!  アリヴェデルチ!






   



  ■次回、第6回は最終回「ベネツィア雑記帳」。
    ベネツィア滞在や街歩きで、川岸さんの目に止まったあれこれです。
    どうぞお楽しみに。
  
   ←第4回へ
   

このページの上に戻る